国税庁のホームページによると、納税者からの国税不服審判所に
対する審査請求によって更正等の処分が取り消された事例は、
以下のようになっています。
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平成20年度 |
平成21年度 |
全部取消 |
92件 |
159件 |
一部取消 |
212件 |
256件 |
つまり、全部取消の事案は、前年度に比べ、172.8%、一部取消は120.8%の高い伸び率を記録しているのです。
あなたの会社は本当に大丈夫ですか?
また、税務訴訟でも、平成18年には、納税者側が勝訴した判例が、17.9%という高い確率を示しています。
以前は、税務訴訟といえば、「勝てない裁判」の代名詞でしたが、上に見たように、確実に変化が訪れています。
また、 世間でも、
税務訴訟に対する見方は確実に変わってきています。
納税額が過少であれば容赦なく課税してきており、手心を加えてくれることなどありません。
むしろ、事実認定及び税法の解釈において、課税当局と見解が異なるときには敢然と立ち向かい、異議を述べる会社には、そうそういい加減な修正申告を求めたり、更正等の処分をすることができないはずです。
しかも、この不況です。リーマンショックに端を発した不況は、ますます深刻な状況を呈しています。
2009年の倒産件数は、帝国データバンクによると、13,306件といいます。1日に約36社が倒産しているのです。
会社には役員や従業員がいて、全ての人の生活を守っていかなければなりません。そして、彼ら全てには、家族がいます。年老いた親、配偶者、かわいい子供達の生活も守っていかなければなりません。
さらに、
取締役には、会社に対する忠実義務、善管注意義務があります。違法不当な課税がされているのに、それを争わないことは、忠実義務違反、善管注意義務違反として、株主代表訴訟の対象となります。したがって、
取締役は、不当な更正処分については、積極的に争っていく義務があるのです。
税理士の先生方にとっても、クライアントの適正な納税の実現に向けた必須の活動と言えると思います。
平成14年4月1日から施行された税理士法で、税理士は、税務訴訟において、弁護士とともに補佐人として、法廷に出廷し、陳述する権利が与えられました。
このような活動を行うこと自体も今後の税理士に求められることとなるでしょう。
ただ、法廷での活動が性に合わない先生もいらっしゃると思います。そのような参謀型の先生には、裏で税務についてご指導いただき、私たち弁護士が法廷で訴訟を遂行する、という方法もあります。
課税庁の処分に不服がある場合にも、いきなり税務訴訟を起こせるわけではありません。
「不服申立前置主義」がとられており、税務訴訟の前に、「異議申立」か「審査請求」をしなければなりません。その後に初めて税務訴訟を起こすことができるのです。
したがって、税務訴訟を起こす場合には、まず不服申立をして、その状況を見極めてから税務訴訟を起こすかどうかを決めればよいのです。
審査請求については、納税者が不服であれば税務訴訟を起こすことができるのに対し、課税庁側は、その裁決に納得できなくても、異議を申し立てることができず、確定します。
したがって、まずは異議申立や審査請求などの不服申立を行うかどうかを検討しましょう。